冒険家の目線で語る道具:時計が命を守った瞬間
— Purnima Shresthaが語る「Lhotse」との信頼関係
標高8,516メートル、世界第4位の山・Lhotse。その頂を目指したPurnima Shresthaの手首には、ある一本の時計が巻かれていた。見た目はシンプル。しかし、その役割は彼女の命を守る「タイミングの羅針盤」だった。

時計はただのアクセサリーじゃない
Purnimaは登山家であり、フォトジャーナリスト。ネパールの農村で育った彼女は、2017年に初の8,000m峰・マナスルを登頂して以来、エベレストを含む8座の山を制覇してきた。そんな彼女がLhotse登頂に際して選んだのが、Ocean to Orbitのプロトタイプウォッチ「Lhotse」だった。

「最初に手に取ったとき、サイズと快適さがすごく気に入りました。手の動きで動力が生まれる機構は、電池の心配をなくしてくれたんです。」
Lhotseの過酷な条件では、スマートウォッチのような電子機器はバッテリー切れが常。実際に、他の登山者たちは携帯電話の電源を切っており、「今何時?」と彼女の腕時計に頼ることが頻繁にあったという。

時間が「命の判断材料」になる現場
登山では時間管理が命を分ける。風が強くなる前に進む、暗くなる前にキャンプに到着する、体調の変化に即応する——そのすべてに「現在の時間」が必要不可欠だ。
「私たちは常に“何時までにどこへ”という計算を繰り返しています。時計がなければ、その計画は成り立ちません。」
さらに彼女はこの時計を、Lhotse登頂後すぐのマカルー遠征(標高8,481m)にも持って行った。「手放せない相棒になった」と笑う彼女の言葉には、実体験から生まれた重みがある。

極限の環境で“信じられる道具”とは
気温マイナス60℃、酸素ボンベ1本5kg、装備は25kg超。そんな環境で使う道具には、「デザイン」よりも「信頼性」が問われる。彼女はこう語る。
「時計が水に強く、操作が直感的で、何より壊れないことが重要。Khumbu Ice Fallで転倒したときも、時計はちゃんと動いていました。」
この時計は100m防水。彼女は下山後に氷の中に入って冷却した際も、外すことはなかったという。

信頼は“道具との絆”から生まれる
山頂での一瞬を支えたのは、仲間だけではない。極限の世界で一緒に時間を刻んだこの時計は、Purnimaにとって単なる機械ではなく、登山の成功を分かち合った“チームの一員”となっていた。
「もう日常でもつけてます。街中でも、あの頂を思い出させてくれるんです。」
彼女のような冒険者にとって、信頼できる道具とは、装備を超えた“パートナー”なのかもしれない。